MY GAME LIFE

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『Sky 星を紡ぐ子どもたち』 風ノ旅ビトを超える唯一無二の体験

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 『Sky 星を紡ぐ子どもたち』はthatgamecompanyが手掛けたスマートフォン向けアプリだ。このデベロッパは『風ノ旅ビト』や『Flowery』でも有名であり、本作はこれら2作品の独特の雰囲気や世界観、音声・テキストなどの言語を極力排して洗礼されたデザインをしっかりと継承していて、まさにTGCお家芸と言える美しさと気持ち良さを併せ持った作品に仕上がっている。

 

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 プレイヤーは星々の世界から落ちてしまった精霊を救うべく、7つの地方に散らばるキャンドルに灯を燈しながら歩を進めていく。 『風ノ旅ビト』ではオンラインで二人旅をすることができたが、本作ではさらに多くの他のプレイヤーがフィールドに存在し、様々なアクションを行いながら共に進むことができる。なおソロプレイでもクリアは可能であり、協力プレイでなければ乗り越えられない要所等はない。

 

 

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 フィールドに居る他のプレイヤーキャラクターは灰色の姿をしており、互いのキャンドルを重ねることでフレンドになることができ、そこで初めて全貌がはっきりと現れる。また『風ノ旅ビト』と同様に本作でも「ポワン、ポワン」と波長による非言語のコミュニケーションが可能だ。そうして他のプレイヤーとフレンドになると手を繋いで共に旅をすることができる。言語を用いずになんとなく意思疎通を図り、互いに協力してキャンドルを燈していく一体感は『風ノ旅ビト』で味わった感動を思い出させる。

 また本作では随所に置かれているベンチに座るとチャットをすることができ、さらにプレイヤー同士の繋がりを深めることができてとても楽しい。ちなみに初めてチャットした相手はアフリカに住む女の子だった。

 

 

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 本作は『風ノ旅ビト』に引けを取らない美しさでプレイヤーの目を奪う。遥か彼方にそびえる頂や風が吹き抜ける草原、遺跡を照らし出す陽の光は歩みを止めて眺めてしまう。本作は空を飛ぶことが多いので世界をより広範囲で眺めることができる。そしてその中で特に度肝を抜かれたのは雲の描写だ。

 

 

 雲の表面は絶えず動き続け、山肌を流れ落ちるように進む。雲のトンネル内を飛ぶシーンは息を呑むほどの美しさであり、thatgamecompany作品の代表的名シーンになるだろう。

 

 

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 ただ気になった点もいくつかある。マルチプレイに重点を置かれた本作は『風ノ旅ビト』のような極限まで削ぎ落とされて産み出されたミニマリズムを失ってしまったようにも思う。本作ではあちこちに多くのプレイヤーがいるので、美しい景観を眺めたりカットシーンを観ているとその姿が少々邪魔に思えてしまうのだ。さらに本作ではヒントがテキストで表示されたり、各種アクションのアイコンが至る所で表示されるので『風ノ旅ビト』のように世界観をじっくりと味わうことができなくなってしまっているのが非常に残念である。先述したチャットも確かに楽しいものではあるけれど、特別必要性は感じるものではなかった。あのポワンポワンのコミュニケーションだけでもこの世界観には必要十分だったのではないかと思う。

 確かに無駄なデザインが増えてはいるけれどそれで本作の魅力が失われることはない。本作には本作の面白さがあり、偉大な作品である『風ノ旅ビト』では味わうことのできなかった唯一無二の体験がある。その体験は間違いなく美しく、そして楽しい。

 

 

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 本作は本当に気持ちの良い作品だ。旅をしながら風の声を聴き、空を舞い、見知らぬ世界中のプレイヤーたちと出会い、そして別れる。なんと贅沢な作品だろうか。暴力もなく、破壊もなく、絶望もない。そこにあるのは豊かな大地と澄み渡った空、そして命だけだ。ただただ優しく、ただただ暖かく、そして、ただただ美しいゲームだ。

 

 

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