MY GAME LIFE

ゲームと映画とロマン、あとなにか。

『The Walking Dead』感想 クレメンタインよ、強く生きろ。

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 海外ドラマの『ウォーキングデッド』は日本でも人気のある作品だ。僕もシリーズの大ファンの一人。しかし、実はTVドラマより先にゲームで本作を知った。特徴的なコミック風のビジュアルが目に止まり手に取った。

 グロテスクが売りとなるゾンビゲームにはその"グロさ"を鮮明に見せつけるためにある程度のグラフィックが求められる。しかし、本作はとてもリアルとはいえないタッチで描かれている。当初は、これでゾンビゲームとしての恐怖を表現できるのかと疑問に思った。子供向けのホラーゲームなのかとさえ思った。

 このように他のゾンビゲームとは大きく異なる印象を持った本作。そのビジュアルでどのような物語を提示してくれるのかと妄想に妄想が膨らみプレイせずにはいられなかった。結果、夢中になってシーズン1・2をプレイしてしまった。

 

 

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 人々が次々とゾンビになる感染症が広まるアメリカ。主人公のリーは、一人で隠れていた少女・クレメンタインと偶然出会い、一緒に逃げることになる。行く先々で様々な人間と出会い、ときには協力し合い、ときには憎み合いながら安全な地域へと旅をする。

 本作では会話・行動の選択やQTE、限られた移動操作を行い物語を進めていく。難易度的には比較的優しいので、誰でも楽しめて物語に集中できる。また本作はTVドラマのようにエピソードごとに前回のあらすじとエンディングがある。『ライフイズストレンジ』も同じ構成だったが、こういったTVドラマ構成は非常に良いデザインだと思う。物語が面白くなってきたところで終わるので続きが気になってさらにプレイしてしまう。ADV特有の中弛みも減少し、没入感をさらに高めてくれる。

 

 

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 冒頭で述べたように本作は決してバイオハザード『ラストオブアス』のような鮮明でリアリティのあるグラフィクではない。確かに上記の作品のような恐怖や迫力を感じられるものではないが、本作にもハンマーでゾンビの頭を潰したり、斧で手足を切断する描写があり、そこには本作のグラフィックでしか描くことのできない恐怖と迫力、グロテスクさがある。

 しかし、それだけであれば物足りないことは言うまでもない。だが、このグラフィックで描く恐怖をさらに際立たせ、プレイヤーを没入させる力が物語にある。

 さらに本作の魅力として強調したいのは選択肢の「辛さ」。物語を進めていく中でプレイヤーは様々な選択を迫られる。それは『ラストオブアス』『ヘビーレイン』よりも痛く辛い選択の連続だ。間違いなく他のどのゲームよりもプレイヤーを悩ませ苦しませる。

 これら"独特のグラフィック"と"選択肢の辛さ"に物語が絡み合い、ドラマ版にも引けを取らない唯一無二のオリジナリティ溢れる作品となっている。

 

 

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 クレメンタインはリー達と行動を共にしながらはぐれてしまった両親を探す。ゾンビは幾度となく彼女を襲う。そして大人たちは彼女の目の前でゾンビを殺していく。ただでさえ幼い少女には厳しすぎる状況が次々と降りかかる中、さらに大人たちは彼女を冷たくあしらう。貴重な食料を与えるのを拒んだり、無茶な要求を出したり。彼らは彼女が少女であることを許さない。

 それでもクレメンタインは幼いが故に持つ純粋さと優しさで周りに気を配り、率先して自分のできることをやろうとする。辛い光景を目の当たりにしてもそれを振り払い、笑顔を絶やさない彼女を見ていると、リーたち、そして我々プレイヤーから絶望漂う雰囲気を拭い去ってくれる。

 だが、やはり彼女を取り巻く環境は、いくら幼い子供といえども情け容赦なしに襲いかかる。大人たちは自己保身に走り、ゾンビの数は増え続ける。優しく接してくれた仲間もゾンビに殺され、ときには同じ人間に殺されて感染していく。

 

 

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 彼女は女の子として大切な髪の毛を短く切り落とし、自分と仲間の命を守るために銃の扱い方を学ぶ。クレメンタインは少女が行うべき以上のことを学び、実行していく。そんな彼女を直視するのは非常に辛いものだった。それでもやはり彼女は明るさを失わなかった。その姿がまた目頭を熱くさせる。

 

 

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 だが、いくら辛く厳しい状況を乗り越えても彼女に安らぎは与えられない。日々を生き抜き成長していくクレメンタイン。それでもまだ子供であることに変わりはない。そんな彼女に大人たちは相も変わらず情け容赦無くあたる。彼女の成長に伴い、大人たちはさらに厳しく接し、無茶な要求をする。そして大の大人が彼女に判断を委ね、それが自分にとって良い結果とならなかった場合は、これでもかと彼女に冷酷な態度をとる。

 そんな日々を過ごしていくうちに、クレメンタインの瞳からはかつては宿っていた純粋さや優しさが失われていく。そこには生命力すら感じられない。

 少しずつ時間をかけて信頼してきた大人たち、仲間たちにことごとく裏切られ、クレメンタインは悟る。自分だけが頼れる人間、信じられる人間だと。

 

 

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 今までは幼くか弱い少女だったクレメンタイン。生き残るためには大人たちの保護が必要だった。いくら銃を扱えたとしても、少女一人の力でこの世界を生き抜くことなど到底不可能であることは彼女にもわかっていた。

 しかし、今では彼女も少女ではなくなった。厳しい試練を乗り越え、辛い状況も必死に生き抜いてきた。決して大人のような力や強さがあるわけではないが、子供のような弱さもない。そして今、彼女の腕の中には無力な赤子がいる。かつて誰かの保護を必要としたクレメンタイン自身のように、この赤子も誰かの保護を求めている。彼女は哀れな大人たちの元を去り、自分の力でこの子を守ると決める。そんな彼女の遠くを見つめる目には力強い意志が宿っていた。

 

 

 

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